●今日は、霞澤産婦人科医院で行われている無痛分娩について、産科医の吉田典生先生(産婦人科医・当院院長)と霞澤昌代先生(麻酔科医師)にお話を伺います。よろしくお願いします。
吉田先生(産科医)
よろしくお願いします。
霞澤先生(麻酔科医)
よろしくお願いします。
●まず、無痛分娩について簡単に教えていただけますか?
吉田先生 はい。お産の痛みには大きく分けて陣痛と産道の痛みがあります。昔は「お産で痛いのは当たり前」という考えが一般的でしたが、今では痛みを和らげる方法がいくつかあります。その中でも硬膜外麻酔は、痛みを効果的に取り除く安全な方法として広く用いられています。
霞澤先生 昔はそういわれていた時代もありましたね。でも今は無痛分娩という方法があります。これは安全な管理体制のもとで行う必要があります。当院では、あらかじめ分娩の日程を決める計画分娩を採用しており、日中に無痛分娩を行います。そのため、夜間や休日には無痛分娩を行えない場合もあることは知っておいていただきたいですね。
●霞澤産婦人科医院での無痛分娩の具体的なスケジュールについて教えてください。
吉田先生 入院当日は15時に来院していただきます。18時に子宮口を拡張する処置(メトロ挿入)を行ってその日はお休みください。翌分娩当日は朝7時に浣腸と部屋移動を行い、8時半から9時半の間の診察を経てメトロの抜去を行います。その後、陣痛促進剤を用いて陣痛をおこし、陣痛が有効になったところで麻酔を開始します。
麻酔を行う前に少し痛みを感じることがありますが、これは陣痛がしっかりとつくために必要なことです。硬膜外麻酔は、背骨の硬膜外腔に細い管を留置し、そこから麻酔薬を投与するものです。麻酔の効果には個人差がありますが、痛みはほとんど取れます。
入院日 | 15:00 入院 | 18:00 メトロ挿入 | 就寝 |
分娩当日 | 7:00 浣腸・部屋移動 | 8:30~9:30 メトロ交換 | 陣痛促進剤⇒麻酔 |
●硬膜外麻酔というものに関して、もう少し教えてください。
霞澤先生 聞きなれない言葉ですものね。では硬膜外麻酔について説明しますね。
背骨の硬膜外腔という場所に細くて柔らかい管を留置し、その管を通して麻酔薬を入れるのが硬膜外麻酔です。
細くて柔らかい管を留置するために針を背中に刺して行います。このため、産婦さんには分娩台で横になり、背中を丸くする姿勢をとっていただきます。麻酔効果には多少の個人差があります。
痛みはほとんど取れますが子宮の張り感やおしりへの圧迫感などは、残る程度に麻酔を調整していきます。もし効果が弱いような場合は、再度背中に穿刺させていただきます。
●硬膜外麻酔のメリットとデメリットについて教えてください。
吉田先生 メリットとしては、痛みが取れること、筋の緊張が緩和されて産道が柔らかくなり、子宮口が開きやすくなることがあります。一方、デメリットとしては、麻酔により陣痛が弱くなり、分娩時間が長くなることがあります。また、吸引や鉗子分娩になる可能性もあります。
霞澤先生 他にも麻酔の合併症として、低血圧、頭痛、皮膚のかゆみ、吐き気、発熱、神経障害(異常感覚)・麻酔薬の血管内注入(痙攣)・麻酔薬のくも膜下注入(広範な麻酔効果)・麻酔部位の感染・出血などがあります。ただこれらは一時的なもので、重篤なものに発展することは稀です。そのような場合には症状に応じて処置をしていきますのでご安心ください。麻酔は医療行為ですので、このような症状がおこる可能性と薬による痛みの軽減という効果をよく理解しておくことは大切だと思います。
●無痛分娩が行えない場合もあるのでしょうか?
吉田先生 一部行えない事例があります。まず産婦さんご本人の問題として、側弯症、極度の肥満、過去に脊椎や背骨手術を行った方は、麻酔自体が困難になる、もしくは効果が不十分になる可能性があり、無痛分娩不可となります。また、計画していた日にち・時間よりも早く障痛が始まってしまった場合にも無痛分娩不可となります。
あとは当院の問題として、お産が立て込んでいて無痛分娩を安全に進めるための措置をとることが困難であると当院が判断した場合にも無痛分娩ができない場合があります。
お産は産婦さんと当院スタッフが協力して、新しい命の誕生をサポートすることが一番の使命になります。「すべてのお産を安全に」という目的から無痛分娩を行えないことがあることもご理解いただけると助かります。
●命と向き合う現場ですものね。確かにお産が重なった時など、スタッフの皆さんの大変さも理解はできます。あっ、肝心なことを聞き忘れるところでした。霞澤産婦人科医院での無痛分娩の費用について教えてください。
吉田先生 大事な話が残っていましたね。無痛分娩の費用について説明します。通常の分娩費用にいくら加算されるかという内容で答えますね。
初産の方は普通分娩費用に150,000円、経産婦さんの場合は100,000円の加算となります。
無痛分娩を希望していなかった方で、実際の経膣分娩進行中に急遽無痛分娩を希望されるような場合は180,000円の加算させていただきます。
●急遽無痛で…。なるほど、思ったより痛みが強くて希望するような場合も実際あるということですね。でもそんな時にも対応可能というのは安心できます。他に他院と比較して霞澤産婦人科医院の無痛分娩の特徴を教えてください。
吉田先生 当院の無痛分娩の大きな特徴の一つは、麻酔科医がいることです。これにより、無痛分娩の際に迅速かつ適切な対応が可能となり、安全性が高めることができると考えています。また計画分娩を採用しているため、分娩の日程をあらかじめ決めることができ、余裕をもってスタッフがお迎え可能。安心してお産に臨めるようになります。
霞澤先生 麻酔科医がいない施設の場合、無痛分娩時のトラブルに対し麻酔科医が対処することができない場合もあるでしょう。当院では、このような場合でも麻酔科医が対応できることが良い点ではないかと考えます。
●最後に、無痛分娩を希望する方へのメッセージをお願いします。
吉田先生 無痛分娩は、安全で効果的な方法です。痛みを和らげることで、よりリラックスしてお産に臨むことができます。是非検討してみてくださいね。
霞澤先生 そうですね。無痛分娩を希望される方は、ぜひ事前にご相談ください。安全にお産を進めるために、しっかりとサポートさせていただきます。
●今日はありがとうございました。
吉田先生 ありがとうございました。
霞澤先生 ありがとうございました。